マウスのグルコース負荷試験(GTT)のプロトコル

マウスのグルコース負荷試験(GTT)のプロトコル

マウスのグルコース負荷試験(GTT)のプロトコル

糖尿病研究において、マウスのグルコース負荷試験は耐糖能を調べるうえで基本的な実験となります。

準備物

  1. D-グルコース水溶液
    D-グルコース1gあたり10mLの生理食塩水に溶かした水溶液をフィルター滅菌する。
    使用前日に水溶液を作成し、一晩室温に置く。
    そうすることでα-D-グルコースとβ-D-グルコースが平衡に達する。
    L-グルコースはエネルギーとして利用されないグルコースなので使用しないこと。
  2. 血糖値測定器
    ヒトの糖尿病患者が使用するものでOK。
    血糖値はヒトとマウスでほぼ同じ。
  3. 26ゲージ針付き1mLシリンジ

プロトコル

  1. 前日夕方にエサを抜き絶食開始(水は与える)。マウスは1匹ずつケージに分けておく。
  2. 16時間後、給水瓶も外し、体重を測定し、空腹時血糖値を測定。
  3. 採血はマウスを保定し、尻尾の先をごく薄くハサミで切る。血だまりを一滴作り、血糖値測定器で測定する。
  4. その後、体重10gあたり0.1mLのグルコース水溶液を腹腔内注射する。
  5. 注射直後から時間を計測し、30分後、60分後、120分後に血糖値を測定する。

※複数のマウスを同時にGTTする場合
まず全てのマウスの体重と空腹時血糖値を測定。
マウスのケージを、机上に測定順に並べる。
グルコース水溶液の腹腔内注射を2分おきに1匹ずつ行う。
30分、60分、120分後の血糖値測定も、順に2分おきに行う。
※慣れれば1分おきでも可能。

マウス腹腔内注射の方法

  1. 非利き手でマウスを保定する。尻尾も掴んで固定したほうが下半身が暴れず安定する。マウスが暴れないようにしっかりと保定する(私の場合は小指と薬指で尻尾をつかむようにしています)。
  2. マウスの腹部をアルコールで軽く消毒する。
  3. 腹部の中心より右下側(左下でも可)に腹に対して約30°の角度で注射針を刺す。
  4. 注入する前にシリンジを少し引く。針が正しく入っていれば、抵抗を感じ、シリンジを引くことができない。もしシリンジを引くことができ、マウスの血液などの体液が逆流すれば失敗なので、針を抜いて再度やり直すこと。
  5. 静かにシリンジを押し、液を注入する。

 

GTTの解説

上記のグルコース投与量だと、体重1kgあたりグルコース1gを投与することになるので、ヒトの75gOGTT(経口糖負荷試験)とおおむね同じ程度の投与量となります。
ラボによっては2g glucose/kg body wtで投与するところもあるようですが、人のOGTTに合わせて1g glucose/kg body wtのほうがメジャーだと思います。

 

グルコース水溶液は必ずしも上記のとおりである必要はなく、濃くすることも薄くすることも可能です。
しかし、濃すぎると正確な量の投与が難しくなります。
反対に、薄いと体液量が多くなり、これも結果に影響を及ぼすかもしれません。
体重10gあたり0.1mLというのが、数的感覚も良く、ミスが少なくておすすめです。