ラットを用いた薬理薬効実験などでは、尾静脈注射(iv)で薬剤を投与することがよくあります。
ですが、尾静脈注射は意外と難しく、熟練が必要です。
ラットの場合、マウスよりも血管が太いので、その点では楽です。
また、BL6マウスなどは非常に血管が見えにくいですが、ラットだと比較的見えやすいです。
しかし、ラット尾静脈注射で最も難しいポイントは、ラットの力が強く、尾をしっかり固定することが困難だということだと思います。
そこで、このページでは、ラットの尾の力をいかに逃がしてしっかり保定するか、そのコツについて解説したいと思います。
最も基本的なことです。
ラットが暴れても動かない、重い保定器でしっかり保定しましょう。
注射針を刺す部位を含む尻尾と、ラットの身体とがなす角度を90度くらいにすることで、ラットが尻尾を瞬間的に引っ張る力を逃がすことができます。
人差し指と中指をペンチに見立て、そのペンチでラットの尾を固定するというイメージです。
ポイントは両指の関節ところで尾を挟むところです。
ここが大事です。
ここで挟むことで、ガッチリと固定することができます。
関節と関節の間の部分で挟んだ場合、ラットが尻尾を強く引っ張った場合、固定できずにずれてしまいます。
また、第1関節を使った場合だとテコの原理の力点と作用点の距離が遠くなるので固定力が弱くなってしまいます。
ラットは血管が太いため、マウスに比べるとivそのものは格段に楽です。
また、マウスに比べて尾の表皮が硬めのため、針が静脈に入った時の手ごたえを感じやすいと個人的には思います。
マウスに尾静脈注射ができる人にとっては、尾が暴れないように固定できれば9割方成功と思ってよいのではないかと。
静脈を見えやすくするために、アルコール綿でゴシゴシこする人がいます。
確かに、アルコールでこすったときは見えやすくなります。
しかし、しばらくしてアルコールが揮発したときに体温を奪い、血管が収縮してしまい、かえって醜くなってしまいます。
エタノールは消毒のためにさっと使うにとどめるほうが結果的に成功率を高めるように思います。
よく使われるテルモのディスポシリンジのように、注射針とシリンジが取り外せるタイプのものは、針の根元の固定が少し甘く、横からの力に対して、針が根元からかすかにしなるように感じます。
ラットは尾の表皮が硬く、この注射針の根元からのしなりによって少し狙いがつけにくいように感じます。
慣れていないうちは、シリンジと針を分けることのできない一体型の注射器を使ったほうが良いでしょう。